藤井大史の音楽講話<前編>

(1990年代に開催された藤井大史による講演の文字起こし、管理人による投稿です)


 この間ドイツから帰って来た芸大に行っていた友だちが、〜バッハの研究にドイツに行っていたのですが〜、夏だから田舎の方に遊びに行ったら「お前は何を勉強しにドイツに来たの?」と聞かれたので、「バッハの研究のために来てる」と言ったら「そんな新しいもんを研究してどうすんの?もう少し古いものやったらどう?」と言われたんだそうです。最初、彼はからかわれているのだと思ったそうです。ところが、向こうは真剣なんですって。


 それで、よくよく考えてみたら、日本だとバッハがわりと古い作曲家、という風に教わるんですよ。で、古いとか新しいとかいうのは何か比較の基準が無ければいけない訳ですけれども・・・。ここにいらっしゃる方々に例えば「日本史に詳しい、又は学生時代に日本史がとても好きだった人は手を挙げて下さい。」と言うとそんなにたくさんの人は手を挙げないんですね。逆に「日本史に詳しくない、学生時代にも好きではなかった、苦手だった人は・・・。」と言えば殆どの人が手を挙げちゃうんです。いろんなところで聞きましても大体8割位の人が手を挙げちゃうんです。


 ところがですね、いくつかの試験をしてみると、実は皆んなすごく日本史のことを知っているんだ、ということが判る。外国の歴史に比べてですが。試しに今からやってみます。


 「源頼朝と徳川家康はどちらも征夷大将軍。(時代が)古いのはどちら?」と問われて、大抵の人はわかるんです。源頼朝の方が古いでしょ?これ、どっちがどっちの時代か知らなければ答えられないんです。もっと下らない比較をしてみます。「小野小町と清水次郎長、どっちが古い?」と聞かれれば大抵判るでしょ。それはどうしてか?それは知っているからです。ところが、外国でこれをやると全然判らないんです。「ジャンヌ・ダルクとルイ14世、どちらが古い?」なんて聞いても8割位わからない。これは、ジャンヌ・ダルクの方が300年位古いんですが。では「ナポレオンとワシントン?」「エリザベス1世とリチャード3世?」。

 

 こうやってみると我々日本人というのは、日本史のどういう人物がどの辺(時代)にいたか、ということが判る。知っているんです。それで、どの辺から古くてどの辺が近くてどの辺が新しいかというと、大体常識的に、明治維新に活躍した人たちとかそれ以後の人たちというのは割と近いというイメージがある。昭和初期まで生きていましたからね、だから同世代人という人もいるわけです。新撰組の人たちなんてのは、昭和4年か5年まで生きてましたからね。

 

(後編に続く)





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